詩歌

服部南郭

「夜下墨江」服部南郭 金龍山畔江月浮 江揺月湧金龍流 扁舟不住天如水 両岸秋風下二州 夜、隅田川を下る。 金龍山浅草寺のほとり、川に月が浮かぶ。 川は揺れ、月は沸き、金の龍が流れる。 小舟は留まらず、天は水のようだ。 両岸に秋風が吹く、武蔵と下総の…

元田永孚の漢詩

元田永孚 中庸。 一応、承句と結句は押韻しているが、平仄はわりといい加減。 「去」がよくわからん。「さる」ではなく「ゆく」と読ませるようだ。 彼の作の中では詩吟などで好まれて、一番有名なようだが、そうとう若い頃の詩ではなかろうか。 幕末? 靄然…

母在森

ふと、日本人が作ったと思われる漢詩 が気になったのだが、 難しくないから読めばわかると思うがお寺さん関係の詩である。 中国語の文法的にも特に問題はないように思われる。「旅立」というのは「旅立ちの里」という施設名を詠み込んでいるのだから漢語的に…

題中野坂上新学舎

少し直した。 漢詩いじってると時間がどんどん経つ。ヒマつぶしにはちょうど良いかもしれん。 「王府城」がちとおおげさかな。承句だけがいまいち決まらない。 厚木と中野の大きな違いは、中野で時間が余ったら新宿まででかけてヨドバシやビックカメラでゆっ…

西遊記冒頭詩

西遊記冒頭詩。 押韻、平仄ともにきちんとしている。 混■沌■未■分□天□地■亂■ 茫□茫□渺■渺■無□人□見■◎ 自■從□盤□古■破■鴻□濛□ 開□闢■從□茲□清□濁■辨■◎ 覆■載■群□生□仰■至■仁□ 發■明□萬■物■皆□成□善■◎ 欲■知□造■化■會■元□功□ 須□看■西□遊□釋■厄■傳■◎ まあ、パ…

推敲

「凝」はもともと氷が固まることを言い、「凝然」はじっとしているさま、というので、 家屋凝では家がたくさん密集していることにはならん。 ので少し手直しした。 蒸と庚と青は通韻なのを利用。 高楼巨塔、層々として聳ゆ。殷富なり、洛西の中野町。 竣工を…

題中野坂上新学舎

なんか漢詩読んでると自分でも作りたくなったので作った。 題中野坂上新学舎 高楼巨塔聳層層 新宿西郊家屋凝 得待竣工新校舎 神田水上学生灯 わりと簡単なので原文で読んで欲しいのだが、 高楼、巨塔、層層として聳え、 新宿西郊、家屋、凝たり。 竣工を待ち…

張雨 湖州竹枝詞

張雨 湖州竹枝詞 臨湖門の外が私の家だ / あなた、もし閑なときには来てお茶をお飲みなさい / 黄土で垣根を築き茅で屋根を覆い、/ 門前には紫荊花が一本植えてある。 なんということはないが、しみじみ良い詩だ。

柳宗元 江雪

夏休みに突入したのでまったりと漢詩など。 柳宗元 江雪。 「飛」はいわゆる挟み平という例外規則だろう。とすれば平仄は完璧。 仄で韻を踏んでいるのも、この時代では珍しいのだろう。 「千山鳥飛絶」と「萬徑人蹤滅」が一字ずつ対になっている。 「千山」…

春日

たまには七言絶句でも作ろうかと空き時間に、 春日 長閑独歩落花行 長閑、独り落花を歩み行けば、 暖気満光新緑生 暖気、光満ちて、新緑生ず 雖是吾尤好季節 是吾が尤も好む季節といえども 事成煩瑣愈無精 事煩瑣と成りていよいよ無精 「いよいよ無精」とか…

桜芽下作

一応、春なので桜芽下作。 萌芽映幼枝 萌芽、幼枝に映じ、 酔漢訪花時 酔漢、花を訪ねる時。 露酒風餐宴 露酒風餐の宴、 応招一美姫 まさに一美姫を招くべし。 ええっとこれは実は実景ではなくて想像の景色なのだが、 「映」は 杜牧「千里鶯啼緑映紅」とか王…

陸奥宗光の詩

陸奥宗光が十五才の時に作った詩らしいのだが、すごくよくできているな。 敢えてけちをつけると「吟」が孤平だということくらいか。 乃木希典の金州城下作よりも面白い。ただし、形式は乃木希典のほうが整っているが。 整っていると言う意味では、これに過ぎ…

斗南先生

中島敦の比較的初期の作品で「斗南先生」というのがある。 斗南先生とは中島敦の叔父中島端のことで、この作品の中に出てくる漢詩もその叔父が作ったというものだ。 冒頭の詩は読み下し文から復元すると次のようになる。 雲海蒼茫佐渡洲。 やはり押韻はきち…

中島敦の漢詩

そういえば中島敦は漢詩を書いてたなと思い、今更ながら調べてみる。 まずは、「山月記」に出てくる詩 偶因狂疾成殊類だが、これは中島敦の作ではないらしい。 「四庫全書」に「人虎傳」というのがあって、そこにそのまま載っている。長いがそのまま引用する…

押韻と平仄

普通は「平」で押韻するものなので、「平」の種類だけまずは覚えればよい。 「平」にも字が多く含まれるグループと少ないグループがある。 上平声だと「支」「虞」、下平声だと「先」「蕭」「陽」「尤」など。 選択肢が多い方が押韻しやすくなる。 たとえば…

詠石榴詩

王安石の作とされる「詠石榴詩」 万緑叢中紅一点 動人春色不須多 というものがある。一面の緑の中に赤い花がぽつんと一つある。 人を感動させる春色はたくさんあれば良いというわけではない。 そういう意味だ。 以前から、これが七言絶句の一部だったら、と…

書剣十年唯自憐

永井荷風の詩。少し面白い。 1927年の夏に作ったものというから、48歳くらい。 書剣十年唯自憐 不如午夢伴花眠 青雲有志帰虚願 羸得一囊詩酒銭 永井荷風は慶応大学の教授だったが、1916年に辞めて作家活動に専念するようになった。 「書剣十年」とはこのこと…

慕江戸

実はまだやっているのだが。 昔、平仄も押韻もめちゃくちゃで作ったやつを直しているところだ。 慕江都 五言絶句版 墨江分二州 富嶽聳西方 八万徳川騎 今如成異郷 江都(江戸)を慕う 墨江(隅田川)は(総武)二州を分ち 富嶽は西方に聳ゆ 八万徳川騎 今は異郷と…

過清華宮

面白いのでもう少し続ける。 杜牧過清華宮。 清華宮とは長安の離宮で楊貴妃の別荘。 華清宮 とも言う。 「貴妃池」またの名を「華清池」温泉を引いた露天風呂で楊貴妃が湯浴みした。 そのため清華宮もとは「温泉宮」と言った。 驪山の麓にあり、その山頂は13…

飲湖上初晴後雨

蘇軾の飲湖上初晴後雨、面白そうな詩だが、ネットには解釈が載ってないようなので、少しやってみる。 水光瀲灩晴偏好 水面にさざ波がたってきらきらと光り、晴れはたいへんよろしい。偏は「偏に」と解釈した。 「瀲」「灩」はともにさざ波が立って水がみなぎ…

平仄くん

平仄くんは javascript (jquery) 部分がだいぶ進化した。 マウスオーバーによって、押韻している箇所がわかる。 さらにその韻と同じ漢字の一覧が表示される。 平仄と押韻を調整しながら、漢詩を作ることができるのだよ。 漢字の辞書はまだ完全とは言えない。…

ニ四不同・ニ六対

今日も平仄くんで遊んでいたのだが、 物の本によれば「ニ四不同」とか「ニ六対」という平仄の決まりがあるらしい。 「ニ四不同」というのは一つの句の中でニ字目と四字目の平仄が同じではいけないということ。 起承転結どの句でも、五言でも七言でもそうしな…