CGにおける曲面のモデリングと視覚的表現は,それ自体非常に興味深い研究分野であるが,今日この分野でますます重要視されるようになり,また,同時に未だに解決されない問題が多く残されているのは,曲面の位相的な妥当さや自由度についてである. 代数的に表される曲面は種々の可変なパラメータを操作することによってさまざまに変形することができる. 球面や円筒面は半径によって,spline曲面やbezier 曲面などの自由曲面は制御点を動かすことによってその大きさや形状が変化する. しかし,これらの代数的曲面はそれぞれ固有の位相を持っていて,他の位相を持つ曲面をパラメータの操作によって表すことはできない. 例えば,自由曲面は制御点の配列によってその位相が決定する. 制御点が矩形に配置していれば,ハンカチをくしゃくしゃにまるめたような曲面を表すことはできても,球面を表すことはできないし,円筒面状に配置していれば,半径と向きが代わる管状の曲面を表すことはできても,その分岐や終端,ループなどを表すことはできない. 自由曲面によって任意の位相の曲面を表すには,制御点の配置を自由に変えられるようにするか,もしくは,複数の曲面を連結して新しい位相を作り出さなくてはならない. また,制御点の配置,構成曲面の組み合わせによって,曲面の位相はいくらでも複雑になり得る. このような,形状と位相の両方を同時に変化させる操作は,位相を固定して形状だけを変化させる従来の曲面のモデリングよりもはるかに難しい.

また,3次元物体は,3次元そのままの形ではなく,その表面,または境界面としてモデリングされ,視覚化されることが多い. 従って,CGにおける曲面は,3次元物体との相互変換という点が常に重大な関心事になる. 3次元物体の表面は,物体の内部と外部を完全に隔て,しかも自己交差も,他の表面とも交差しないという性質を持つ. CGで扱われ得る3次元物体は,ひとかたまりになった単純なものだけでなく,穴や空洞が複数空いていたり,任意の向きに分岐が伸びていたりする. 任意の不定形の3次元物体の位相から,その表面が持つべき位相を計算機上で決定することは,事実容易な問題ではない.

本研究では,曲面のモデリングや表現,視覚的表現方法に関する種々の問題点を踏まえた上で,特に今日,CGの分野で重要性を増してきている,ボリューム・データによって表される物体の表面の構成方法に関して考察を行なう. ボリューム・データが本来いかなる連続の位相も持たないことから,その表面の位相の決定にはさまざまな解釈が可能であって,多くの異なる表面構成アルゴリズムが提唱され,それらの改良案を生む結果になった. 本研究は,位相的な問題点をできるだけ簡潔なアルゴリズムによって完全に解決することを目的としている. ボリューム・データという非常に複雑でかさばるデータを妥当な解釈に基づいて,できるだけ簡潔明瞭な処理手順を用いて, わかりやすく正確に表現することが,本論文で考察するアルゴリズムを評価する最終的な基準になる.