テクスチャの描き方など。

sourcesdkをいじり始めたのは、遅くて、2007年くらいからなのだが、もう5年も経った。 初めの頃は顔が描けなくてひどいありさまだったけど、今から思えば仕方ないことだ。 ローポリキャラの顔を描くというのは普通の絵画を描くのとはまったく違うやり方が必要だから、 多少絵心があったからといって描けるもんではなく、 逆にコツをつかめばかなり上達すると思う。

どちらかといえば、だが、点描画のように点々で色を配置しておいてあとはぼかしツールとか指先ツールとかで混色するのが良いと思う。 それではムラができてしまう、と思うだろうが、色ムラというのはうまく残せば現実感を出すのに効果がある。 油絵で筆使いのあとを残した方が良いのと通じるものがあると思う(やりすぎるとマネキンの化粧のように人工的になってしまうが)。

人の肌はよくよくみるとざらざらしている。 ほくろや毛穴やしみそばかす。 こういう細かなテクスチャが顔の凹凸や立体感を出すのに非常に重要だ。 単に陰影をつけただけではダメなのだ。

頬を赤く塗るのも、下手にやるとチンドン屋のようになってしまうが、 うまくボカすとリアリティがます。 女性が毎日やってる普通の化粧と同じ要領なのだろうなと思う。 塗ってぼかし、塗ってぼかしをひたすら繰り返す。 ただし完全にぼかすのでなく、少しむらを残しておくのが重要だ。

プラモデルの塗装にウェザリングというのがあるが、それに近い。わざと汚す。 そうするとリアリティが増す。 ガンプラなどではその手法がすでに高度に発達しているのに、 ローポリキャラでその重要性を主張している人がほとんどいないのは不思議だ。

ローポリはポリゴンが少ない分、テクスチャの描き込みで立体感や凹凸も表現しなきゃならんから、 余計に絵のうまさが必要とされると思う。 たとえば顔のテクスチャを最終的には512x256くらいにするとしよう。 しかしその解像度では、まつげの幅が画素幅より小さくなってしまい、どんなに器用でも手で描くことは不可能だ。 だから、まず、2048x1024くらいの解像度で描いていく。 後で画素数を落としても、階調というものがあるから、 周波数成分として、元の「キメ」は残っているのである。 たぶんサンプリング理論的に説明のつく話だと思うのだが。

肌だけでなく、服の布地、たとえばジャージや学生服のような一様な色の面積が広いものは、簡単にマットで塗ってしまっては、 ベタッと凹凸感のないものになってしまう。 色は一様でも法線は一様ではないし、陰影もついている。 要するに、法線も陰影も照明モデルに頼るのではなく、ある程度描き込む必要がある。 それはリアルなグラフィックではないかもしれんが、しかし人間の目はそれで簡単に騙される。 リアリティを感じる。 特に、顔の凹凸や陰影を、リアルに表現するにはポリゴンをめちゃくちゃ細かくするか、バンプマッピングを細かくするとか、 あるいは、産毛をはやしたり、なんか特殊な皮膚の照明モデルを使うしかない。 それをローポリでやるには限界があるから、 テクスチャの描き込みでごまかすのだ。 ウェザリングの基本概念だわな。 同じなんだよな。 彫りの浅い顔も化粧で深くみせることができる。 それもまた同じ原理だわな。 初音ミクモデリングなどにはほとんど使われてないが洋ゲーのテクスチャには多用されている。

CGでも静止画だと照明のあて方などでマットな面でもわりと凹凸は表現しやすい。 しかしインタラクティブにする場合には、多少極端なくらい、キメを描き込んでおいた方が、凹凸を表現しやすいのだ。

中年の顔にはばんばんシミをつけた方がリアルになるのは当たり前だが、 若者の顔にも赤みのあるシミをつけた方が、にきびや吹き出物、 カミソリ負けのような肌のみずみずしさや若々しさを表現できる。 生きた肌を描くというのは、しかしやはりかなり高度な技だと思う。

顔は左右対称だから、半分だけテクスチャを描けば良い、というやり方もあるのだが、 久しぶりにやってみて非常に描きにくかった。 全体のバランスがわかりにくいのだ。 左と右を同時に描いていき、右がうまく描けたらそれを真似て左も描きなおす、あるいは逆に左を参考に右を描き直す、 などということを無意識にやっている。 あと、左右が非対称な方がやはり現実感が出る。 あと、顔の中心線上には鼻の稜線とか唇など描き込みが必要なところがあって、それが絵の一番はじにあるのは描きにくくて仕方ない。 もっとマットなテクスチャで良い比較的単純なモデルの場合には、片側だけでも良いのだろうけど。 あと、目玉がやたらでかいようなデフォルメされたモデルの場合にも、あまりキメというものは必要にならない。 目が小さな、リアルな顔の場合には、相対的に目以外の顔の皮膚の面積が広いので、どうしても肌を描きこまないとのっぺらぼうになってしまう。

静止画や動画を作る場合にも、実はそういうことは応用が効くのであり、 ポリゴンを減らせば減らすほどにレンダリング時間はかからなくなり、 他のことに手間をかけられるようになる。 ポリゴン減らした分はテクスチャでうまくごまかす、というのが基本理念。 おうおうにして、テクスチャを貼る前の造形に凝る人がいるが(自分もかつてはそうだったが)、 その段階にこだわっても、多くの場合ムダで無意味だ。 CGはテクスチャをはってなんぼなのだ。 特に洋ゲーをいじっているとそれを感じる。

ローポリ的手法で騙せるところはどんどん利用した方が良い。 今後モバイル分野にも応用できるかもしれんし。

そういうことは、自分で描いてみて初めて気づくのであり、モノの本にはまったく書いてないか、 全然自分の求めてないやり方が書かれていることが多い。 3DCGのモデリングは、ともかくやり方の自由度が高くツールも膨大にあるから、 一通り本を読んだらあとは自分のやり方をみつけてやっていくしかないのだろう。