キャラクターモデリング

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それでまあ、プリミティブから作っていくかポリゴン一枚一枚貼っていくか、 というのはどちらでもよくて、ようは、メッシュのモデリングのやり方の違いであって、 私はプリミティブ派ではあるが、 ポリゴン派の人がいてもいい。 どちらが優れているかという議論も、もうどうでもいい。 ただ、プリミティブ派とポリゴン派のどちらも兼ねることは普通無いと思う。

そんでメッシュがモデリングできたらそれで満足してしまうことが多いが、 次にUV展開が待っている。 むしろUV展開しやすいようにメッシュを切る必要がある。 テクスチャが塗りやすいようにUV展開し、UV展開しやすいようにモデリングするのだ。 メッシュが汚いとテクスチャがゆがみまくる。 美しいテクスチャのためにメッシュを戻って修正しなくてはならない。

UV展開が終わっても次にボーン挿してウェイトペインティングしなきゃならん。 私の場合、Source SDK でウェイトペインティングは泣きたいくらいにやらされたから、 その重要性はわかっているつもりだ。 ボーン挿して重み付け塗るにしても、 メッシュをどういうふうに切れば関節がきれいに曲がるか、 ってことを知らなきゃメッシュは作れない。 つまり、場合によっては、ボーン挿し終えて重み付け終えてから、 またメッシュを修正することもあるのだ。

つまり、メッシュをモデリングするときにすでに重み付けやUV展開のことまで考慮にいれてなくてはならず、世の中の既存のメッシュとか既存のモデリングのセオリーというのは、 そういう長く果てしなく膨大な経験の積み重ねから、 自然とそうなったものなのだ。

そんなことは初めて立方体を押し出しで変形させてモデリングをやる人にはわかるはずがない。 初めてポリゴン並べていく人にわかるはずがない。 だから、一度、メッシュのモデリングからUV展開とウェイトペイントまで全部通してやらせて、 それはそれとして一度捨てて、 もいっかい最初からメッシュをモデリングしなきゃならない。

そして思うに、 この一連のキャラクターモデリングができるようになる人というのは、 たぶん100人に1人か2人くらいしかいないと思う。 10人のモデラーを育てるには500人くらいの学生がいなきゃならない。 20人なら1000人はいなきゃならない。 まあ、1学部の1学年に1000人はいるとして、 その連中にまず3DCGの初歩の初歩の授業を受けさせて、 その中から素養のあるやつだけえり抜いて鍛える、 というやり方でなくては育たないと思う。 ある意味、川の砂から砂金を取るようなそんな作業にも似ている。

でまあ、今言ってるのはローポリの話なんだが、 リギングというのはどちらかというとハイポリのアニメーションやる用語だと思うのよね。 ハイポリで、ボーン挿して、IKとかの設定して、 中割でアニメーションつけていくやり方。 究極には同じっちゃ同じなんだが、 実際にやってることはだいぶ違う。 ローポリというのはわかりやすく言えばMMDであり、 ゲームのキャラの作り方。 最初から人体を1人作れなくちゃ意味が無い。 ボーンは指の一本一本まで入れなくちゃならない。 それをたとえばBVHみたいなモーションデータ流し込んだときに破綻なく動いてくれるかどうかってこと。 リギングというときは、 たぶん一番最初に必要なのは自然な歩行動作のアニメーションが作れるかどうかってことだと思う。 究極のローポリモデリングはリギングに通じるところがあるかもしれん。 だけど普通に考えるとこの二つは違う。 同じ教員が両方教えることも不可能だろうと思うし、 学生がその両方できるようになる必要もない気がする。

で、何も知らない人には、3DCG というのはイラストレーターやフォトショップなんかで言う CGの一種であって、そういうのが 3D になったようなものかなと思っている。 それは全然違う。 さらにそこから踏み込むとローポリとハイポリがあって、 メッシュのモデリングにも二通りの流儀があり、 それよりなによりUV展開とボーンの埋め込みが難しい、ってことがわかるわけなんだが、 3DCG を知らない人とは、何がそんなに難しくもおもしろいのか、 共感することは絶対できないと思う。 確かに数学の証明は「難しい」。 半導体理論や量子力学は「難しい」。 しかしそれとは全然べつの意味において 3DCG は「難しい」。 たとえば、3Dの表面を2Dに展開する。 牛や豚の皮をはぐ作業に似ている。 部分的に投影したりしてばらばらになった皮をもう一度つなぎ合わせたりもする。 ばらしたりつないだり、ばらしたりつないだり。 それを延々とやるのがUV展開。 これは高度な図形パズルであり、おそらく特殊な空間把握能力がないとできない作業であり、 「教育や訓練によってできるようになる」ことではないのだ。

ウェイトペインティングにしても、指の関節一つ一つまできれいに重みを塗っていくのはまさに職人芸であり、 ある種の根気、職人気質のある人にしかできない。 また、塗ることはできても、実際には塗り残しがあったり、破綻してたりする。 なぜポリゴンがこんなぐしゃぐしゃになるのか。 塗り残しはどこなのか。 どこの重みが間違っているのか。 それをリカバーできるには、経験と、直感的な空間把握能力が必要で、 これも口で説明するのは難しい。 「天才」「天職」という言葉を使いたくもなる。

量子力学が難しいことはみんな知ってるが 3DCG が難しいことにはあまりピンとこないだろうと思う。 まあ何でも専門を極めるとそれなりに難しいものなのだろう。 しかし私の周りの専門家たちを見ても、今私がやってることほど難しいことをやってるとは、 とても思えないのである。

だが、世の中には私がやっているのと同じくらいのことができる人はたくさんいるはずである。 でなければ MMD なんかができるはずがない。 ただ彼らの苦労を一般人はまったく知らないし、そんな世界が存在することを想像することすらできないだろうと思う。