就活市場の機能不全

就活してる学生など見てて思うのだが、 たとえばある学生は大学で一生懸命 javascript の勉強しました、 jQueryAjax もこなします、みたいなこと言って就活する。 しかし、企業の方でピンポイントで Ajax のできる新人が欲しい、 と思っているところはほぼないだろう。 あることはあるが、いわゆる web業界の中でも1%あるかどうか。 それを学生個人が探し当てるのはほぼ不可能に近い。 では就職課とか、あるいはハローワークとかが探してくれるかと言えば、 たぶん望み薄だろうと思う。 そんな Ajax とかこまかなことまで職員が知っているわけがない。

思うに、Ajax ができる新卒を求めているような会社は、逆に、 今の新卒市場などまったくあてにせずに、個人的な知り合いから、 Ajax できる子ください、みたいな形で、融通しあってるのではなかろうか。 いちいち公募なんてしてらんないと思う。 だってわざわざ応募してくる学生の中から Ajax できる子を拾い出すなんて、 砂浜から一粒の宝石を拾うようなもんだ。手間がかかりすぎるなんてレベルの話ではない。

むやみやたらと応募や募集なんてしてもしょうがない。

さらに Ajax なんてものが世の中に現れたのはせいぜい五年前くらいだが、 そういうほんとに新しいことに飛びつく企業もなければ、それがわかる経営者も、 日本にはほとんどいない。 大手ほど総合職を取りたがり、現場の仕事はプロダクションやデザイン事務所にふるのがふつうだから、よけいにますますそういう専門職にはうといだろう。 じゃあそういう小さな事務所や制作会社の一つ一つを学生が回れるかというと、ちょっと想像しただけで恐ろしく膨大な時間がかかるってことがわかる。

つまり求人市場としてまともに成立してない、機能していないということだ。

今までは大学新卒の求人市場とは主に大手であり、大手は特に能力によって選別するのではなくて、学歴か学閥で取るのであり、取ったあとに会社の中で教育すれば間に合う、という考え方だったわけで、やはり求人市場というものがもまともに機能していた形跡はない。

大手はダメとして中小のweb制作会社などいくとそういうところはプログラマとSEが分業できてないところが多い。何でもやれと。サーバーとまったら現場にいけとか。クライアントのところ行って営業もしてこいとか言われかねない。 で、大手もだめだし中小もダメともはや手の打ちようがない。

現状にあわせるとすれば、中小企業が求めるような一セットのパッケージになった技能を習得させるような学科ないしカリキュラムが必要になるだろう。 つまり、SEもできます、プログラミングもできます、サーバー管理もできます、webデザインもできます、それらを四年間でまんべんなく学びました、というような学生なら就職はしやすいだろうと思う。 一から就職のための学科を作るしかないのだが、それはそれで何かむなしい。 学生もそれを理解した上で入学してもらわなきゃならんから、受験生に向けた募集も広報も教員構成もそれに合わせてやらなきゃならんわな。

理想的には大手でプログラマやSEや営業職などがそれぞれの専門に応じて分業できているようなところに就職すればいいんだろうが、それはそれでよっぽど人材市場に流動性がないと企業も怖くて採用できないだろう。 だって世の中の技術は日進月歩なのだから、専門職はどんどん流動してもらわないと不良債権になってしまう。 つまり終身雇用的社会では求人はなんでもできる、つぶしのきく、総合職的なもの(もしくは一般職的なもの)にならざるを得ず、専門職はその外の不安定で零細、下請け的な世界に疎外されることになってしまうのだ。スペシャリストが報われるような、スペシャリストを活用するような社会にはなりえない。しかしそんな社会ではもう日本はもたないだろう。 だいたいつぶしがきく総合職のための大学教育というと、基礎教養くらいしかない。 専門教育なんていらぬ、ただ人脈作って、バイトでもして社会勉強して、世界一周旅行でもして見聞を広めていればよい、となる。大いなる青春の浪費だ。

結局スペシャリストというものはその業界に詳しい人に頼ったコネ入社くらいしかないのではないかと思われてならない。 みんな就職氷河期ということばかり問題にしているが、ほんとの問題はそこにはないのではなかろうか。